バンパイヤ手塚 治虫 作画
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発行日 昭和43年10月25日 朝日新聞社 朝日ソノラマ A面:バンパイヤのテーマ トッペイのバラード B面:ドラマ「地獄谷の対決」 バンパイヤのテーマ 作詞 福田 善之 作曲 林 光 うた 松川 義昭 トッペイのバラード 作詞 福田 善之 作曲 林 光 うた 尾藤イサオ 定価 330円 |
テレビ放送の次の日、学校で必ず、「バンパイヤ!」と叫んで主題歌を歌っていたU君のことを思い出します。彼はテレビの影響を受けやすい人間でした。U君には今でも時々会いますが、本人がこのことを覚えているかどうかはわかりません。バンパイヤの主題歌は、パンパイヤがアニメと実写が合成された実験的な作品であるため、アニメソング集などからはずれることが多く、案外見落とされがちですが、隠れた名曲であると密かに思っています。
テレビは、昭和43年10月から44年の3月末まで放送されました。小学校時代の最後の半年です。トッペイ役の水谷豊が狼に変身するシーンは、アニメと組み合わせになっており、水谷豊の顔に毛が生えてくるシーンは実に気持ちが悪かったですね。水谷豊の記念すべきデビュー作となりましたが、見ている側としては、できれば、全部アニメにしてほしかったと思います。
「バンパイヤ」は、「少年サンデー」で「W3」の終了後、昭和41年から42年にかけて連載されました。「少年サンデー」で物語は一旦完結しましたが、1年後に「少年ブック」で、バンパイヤ第二部として「グランドール」の後に連載が始まりました。テレビ化にあわせての第二部の開始でしょう。しかし、第二部は、連載開始後、すぐに「少年ブック」が休刊になったので、未完となりました。第一部は何らかのきっかけで動物に変身するバンパイヤ族の話でしたが、第二部は、何かのきっかけで人間になるウェコという動物の話でした。第二部はバンパイヤとウェコ及び悪人ロックがどう絡み合っていくのか非常におもしろいところで終わっており、未完となっています。誠に残念です。(「マグマ大使」のところで同じことを書いています。)
この朝日ソノラマ・ソノシートには、「地獄谷の対決」というドラマが収録されています。もちろん、テレビと同じく水谷豊が声で出演しています。彼が14才の頃で、声を聞いただけでは誰も水谷豊とは気づかないでしょう。セリフもまだ慣れていない感じで、あまり上手ではありません。収録ドラマはソノシートのオリジナル・ストーリーでしょう。トッペイの他にチッペイ、大西ミカ、岩根山ルリ子は出演していますが、ロックは出ていません。手塚治虫も出ていません。漫画では、手塚治虫本人が主要人物として登場します。(手塚治虫はテレビの「バンパイヤ」にも出演しています。)
ソノシートのドラマ「地獄谷の対決」は、洞窟の中で行われるバンパイヤ族の集会の様子が収録されています。長年、人間に虐げられてきたバンパイヤ族が団結して人間に復讐しようとする決起集会です。トッペイ(水谷豊)は、この集会で人間として生きることを宣言します。このため、裏切り者の烙印を押されてしまいます・・・。設定は全く異なりますが、洞窟の中でバンパイヤ族が集会を行うシーンが漫画にもあります。ドラマ「地獄谷の対決」は、この部分をソノシート用にアレンジしたものでしょう。漫画では、山口県にある秋芳洞でバンパイヤ族の集会が行われています。また、秋芳洞や秋吉台を舞台として、悪人ロックが大西ミカと手塚治虫を殺そうとするシーンが描かれています。秋吉台は日本最大のカルスト台地で、秋吉台にある洞窟で最大の鍾乳洞が秋芳洞です。(下の写真参照)
※秋芳洞(あきよしどう):山口県の人は一般に「しゅうほうどう」と呼んでいます。秋芳町(しゅうほうちょう)というところにあるので、この方が呼びやすいのです。「あきよしどう」は昭和天皇が命名されたそうです。秋吉台は、鍾乳洞やドリーネという凹地がたくさんあるので、よく映画やドラマの犯罪の舞台として利用されます。「八つ墓村」(昭和52年作品 横溝正史原作 野村芳太郎監督 松竹映画)のロケも行われました。
右の写真は、「バンパイヤ」が「少年ブック」に連載されていた時に、最も印象に残っているコマです。おそらく手塚治虫の子供漫画で女性の裸が出てきた初めてのコマだと思います。永井豪でなく、「鉄腕アトム」の手塚治虫がこのコマを描いた、ということに強い衝撃を受けました。この後、「アポロの歌」(週刊少年キング)や「やけっぱちのマリア」(週刊少年チャンピオン)などで手塚治虫の子供漫画にも女性の裸がたくさん登場するようになりますが、永井豪の漫画のようなハレンチなものではありませんでした。(2001.11.3記)
秋芳洞入口 | |
バンパイヤの一コマ 手塚治虫がロックに追われ、 秋芳洞に逃げ込むところです。 (1966年) |
2000年8月30日撮影 |
−古い漫画のレコードなど−