ビッグX

手塚 治虫 作画



発行日 昭和40年2月1日
朝日新聞社 朝日ソノプレス社
A面:ビッグX主題歌
    ドラマ「V3号ノック・アウト!」
B面:ドラマ「V3号ノック・アウト!」

ビッグX主題歌
 作詞 谷川 俊太郎
 作曲 富田 勲
  うた 上高田少年合唱団

定価 280円








 

「ビッグX」は、「少年ブック」に昭和38年から41年まで連載されていた手塚治虫の巨大ヒーローものです。手塚治虫の巨大ヒーローものには、他に「魔神ガロン」「偉大なるゼオ」「マグマ大使」「サンダーマスク」「ゴブリン公爵」などがあります。ビッグXは人間が大きくなってヘルメットを被っているだけですので、当時からそんなにカッコいいとは思っていませんでした。巨大ヒーローもののキャラクターとしては非常に地味だと思います。

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツがエンゲル博士と朝雲博士に命じて開発させた新兵器「ビッグX」。この薬の完成と同時に終戦を迎えますが、ビッグXの関係書類はドイツ兵により焼却処分され、開発した両博士は銃殺されます。しかし、殺されることを予感していた朝雲博士は、ビッグXの平和利用を願ってその製法を息子のしげるの体内に埋め込みます。「ビッグX」の主人公は、そのしげるの息子である昭少年です。

物語は、ビッグXの製法を求めるナチスの残党、ナチス同盟の司令官となったハンス・エンゲル(エンゲル博士の孫)と、それを阻止する昭少年との戦いを中心に繰り広げられます。漫画では、昭少年が薬を注射してビッグXになりますが、テレビでは光線に変更されていました。子供がまねをするからでしょう。テレビで注射にしていたら、当時流行っていた「昆虫採集キット」の注射器で本当に自分に注射する子供が出たかもしれません。テレビは昭和39年から40年にかけて放送されました。主題歌は、作詞が「鉄腕アトム」と同じ谷川俊太郎、作曲は「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」と同じ富田勲です。

主人公の昭少年は、敵役のハンスにいつも裏切られ、再三、窮地に追いやられますが、ハンスが危ないときはいつも助けてやります。人が好いのもいい加減にしろ、というくらいお人好しです。しかし、裏切られたから裏切り返す、やられたからやりかえす、ということを繰り返していてはどうにもなりませんね。ここに手塚治虫のメッセージを感じます。しかし、手塚治虫は、講談社の手塚治虫漫画全集「ビッグX」のあとがきで「(ビッグXは)やたらと正義の味方ぶるのであまり好きな作品ではない。」と言っています。

「少年ブック」で「ビッグX」の次に連載されたのが「フライングベン」です。内容的には「ビッグX」よりも「フライングベン」の左からベンの妹プチ、弟ウル、ベン本人(本犬?)方が面白いと思います。この頃、漫画雑誌に連載されていた手塚漫画はほとんどテレビ化されていましたが、「フライングベン」はテレビ化されていません。このため、「フライングベン」は、テレビ化された他の作品に比べると知名度は落ちるでしょう。

「フライングベン」は、「少年サンデー」の「W3」「バンパイヤ」と同じ頃に描かれています。「少年ブック」の「ビッグX」、「少年画報」の「マグマ大使」、「少年サンデー」の「W3」「バンパイヤ」というように、テレビと漫画で手塚治虫が絶好調の時に描かれたものですから「フライングベン」も非常に面白い作品に仕上がっています。テレビ化されなかったのが不思議なくらいです。原作が「フライングベン」より古い「リボンの騎士」や「ジャングル大帝」「悟空の大冒険」などがテレビ化されていますので、「フライングベン」がテレビ化されなかったのは非常に残念です。

テレビ化の計画はあったらしいのですが、最初のパイロットフィルムの出来が悪かったことと、その次のパイロットフィルムが完成したときは、テレビ漫画の主流がギャグものに移行していたということで、テレビ化の構想が立ち消えになったとのことです。(講談社:手塚治虫漫画全集「フライングベン」あとがきから)(2001.11.3記)

−古い漫画のレコードなど−
                     

のらくろへW3へ


■漫画の部屋■


ホーム

inserted by FC2 system