ストップ!にいちゃん

関谷ひさし 作画


発行日 昭和40年1月24日
朝日新聞社 朝日ソノプレス社

A面:ドラマ(タイトルなし)
   主題歌「ストップ!にいちゃん」
B面:ドラマ(タイトルなし)

ストップ!にいちゃん
 作詞 阪田 寛夫
 作曲 小森 昭宏
  うた  高橋和枝
     松島みのり

定価 280円



中学生の南郷勇一が大人に見えたものです。


「少年」の愛読者だったみなさん! 「少年」が休刊になる最後の最後まで、「鉄腕アトム」とともに「少年」を支えていた関谷ひさしの「ストップ!にいちゃん」です。関谷ひさしの漫画はどれをとっても、何ともいえないやさしさに満ちていますが、これは、きっと作者の人柄がそのまま作品に反映されているからに違いないと思います。そして、その関谷ひさしの代表作である「ストップ!にいちゃん」もご多分にもれず、全編からほのぼのとしたやさしさが伝わってきます。このような素晴らしい漫画は決して忘れてはなりません。後世に語り継ぐべき漫画のひとつでしょう。「ストップ!にいちゃん」は、続・漫画の部屋に掲げている漫画の中でも、私のベスト5に入る作品です。

「鉄人28号」と「鉄腕アトム」と「サスケ」と「電人アロー」と「遊星少年パピイ」と「ポテト大将」(グズラ参照)、最後に、この「ストップ!にいちゃん」で「少年」付録漫画の定番が出揃ったことになります。えっ? 「少年台風」(小沢さとる)、「ナガシマくん」(わちさんぺい)、「シルバークロス」(藤子不二雄)がない? う〜ん、いちおう昭和39年の後半以降ということで了承願います。

なんとあたたかい画でしょう!「ストップ!にいちゃん」は、中学生の南郷勇一とその弟賢二、隣に住む勇一の同級生サチコが繰り広げる楽しいスポーツ学園漫画です。スポーツといっても、梶原一騎のえがく熱血根性ものではなく、普通の日常生活を描いたおだやかな漫画です。おだやかな、そう、やさしい童話のような作品と言ってもいいでしょう。勇一はスポーツ万能で勉強も出来るスーパーマンですが、ガールフレンドのサチコには弱いのです。「ストップ!にいちゃん」の一番古い記憶は、勇一が拳闘に挑戦する話で、そのころの絵は、連載開始間もない頃だと思いますが、勇一の背がかなり高く描かれており、一見高校生のようです。小学生だった私には勇一がとても大人に見えたものです。(「ストップ!にいちゃん」虫コミックス全13巻では、第7巻の「くたばれ!サチコの巻」)

しかし、売れっ子漫画家だった関谷ひさしの作品が、ひとつもテレビ化されなかったのはどうしてでしょうね。「ストップ!にいちゃん」は、関谷ひさしの漫画でも、特に人気のあった作品で、テレビ漫画にしてもおかしくなかったとと思いますが・・・。当時のテレビ漫画のスポンサーは、ほとんどが菓子メーカーでしたが、派手さがないので、お菓子のキャラクターには向かなかったのかな・・・。

話は代わって、@学園もので、A主人公が中学生で、B弟が小学生で、C主人公の同級生に少し勝気で可愛らしい女の子が出てくる、D主人公はスポーツ万能、という漫画はほかにもありましたね。そうです、ちばてつやの「ハリスの旋風」です。ちょっと比較してみましょう。南郷勇一=石田国松、賢二=アー坊、サチコ=おちゃら、主人公のお母さんはどちらも美人。スポーツでは野球、ボクシング、サッカー、柔道が共通しています。また、両作品ともに、主人公を女の子にしたバージョンがあります。「ストップ!にいちゃん」は「リリーフサッちゃん」、「ハリスの旋風」は「みそっかす(後に「あかねちゃん」に改題)」です。さらに、個人的には、サチコとおちゃらが好きだったことも共通しています。(関係ない?)

当時(「ハレンチ学園」が登場するまで)の少年漫画には女の子はあまり登場しません(「鉄人28号」や「伊賀の影丸」にいたっては全く出てこない!)でしたが、サチコ、おちゃらのほかに、かおる(スーパージェッター)、ルリ子(タイガーマスク)、さち子(8マン)、パーマン3号(スミレでなく、パーマン3号がよかった。)などが好きでした。(下表の特別企画:少年漫画に登場する女の子ベスト10参照)

※ 「リリーフサッちゃん」=小学6年生のサッちゃんが、旅行中のおとうさんとおかあさんの代わり(リリーフ)に一家をきりもりするお話です。サッちゃんが、70歳のおじいさんと、二人の弟、一人の妹の世話を一生懸命します。サッちゃんは「ストップ!にいちゃん」のサチコと同じ名まえです。「小学六年生」連載。

シートの声優は、勇一役が高橋和枝、賢二役が松島みのりです。残念ながら、このシートのドラマにはサチコは出てきません。サチコは「ストップ!にいちゃん」で最も重要なキャラクターなのにどうしてはずしたのでしょうね。私がこのシートのプロデューサーであれば、サチコは、「ど根性ガエル」の京子ちゃん(栗葉子)か、ヨシ子先生(武藤礼子)の声にするところです。雰囲気が合っていると思いませんか?

主題歌「ストップ!にいちゃん」は、前半が高橋和枝、後半が松島みのりのパートになっています。高橋和枝がダミ声で勇一の役を演じていますが、この声で前半のパートを唄い、後半のパートを「ストップ!ストップ!ストップ!ストップにいちゃん」という切り出しで松島みのりが引き継ぎます。ここの部分がこの曲の聴かせどころです。(いくら説明したところで、曲を知っている人がほとんどいないと思われるので、ひとりごとを言っているようなもんだな、これは。)

「ストップ!にいちゃん」をもう一度読んでみよう、あるいは、これから読んでみようと思われる方のために、参考までに、虫コミックス全13巻のタイトルを掲げておきます。(下表の特別付録:「ストップ!にいちゃん」虫コミックス全13巻タイトル参照) 「少年」での最終回は、4巻の6「サッカー」です。最後のコマで、勇一とサチコが「読者の皆さんにまた逢える日を楽しみにしています。」と言っています。虫コミックス版では、当然別のコマに差し替えられています。
(2005.1.23記)



特別企画:少年漫画に登場する女の子ベスト10
順位 名まえ 漫画のタイトル 漫画家
サチコ ストップ!にいちゃん 関谷ひさし
おちゃら(葉子) ハリスの旋風 ちばてつや
さち子 8マン 桑田次郎
ルリ子 タイガーマスク 辻なおき
かおる スーパージェッター 久松文雄
パーマン3号(スミレ) パーマン 藤子不二雄
ボッコ W3 手塚治虫
京子 ど根性ガエル 吉沢やすみ
桔梗 真田剣流 白土三平
10 葉子 グランドール 手塚治虫
番外 川崎のぼるの漫画によく出てくる美人の先生
番外 ヨシ子先生 ど根性ガエル 吉沢やすみ
番外 みつ子 ハレンチ学園 永井豪
番外 ママ 天才バカボン 赤塚不二夫

    ※ アニメ版だけで考えると、1位がルリ子、2位がおちゃら、3位がさち子になります。
    ※ クイズ:若月、北原、関、柳生、星野、朝井、柏、吉沢、水島。誰でしょう?全部言えたら相当なツウ!


特別付録:「ストップ!にいちゃん」虫コミックス全13巻タイトル
タイトル タイトル
1 先輩完敗 1 堂々たる忍法
2 プール救助係 2 ドライ・ドライブ
3 がんばれ!サッカー部 3 閣下と富豪
4 スキーとクマさん 1 妖怪博士の巻
5 学芸会 2 くたばれ!サチコの巻
1 金星人来襲 1 珍説桃太郎
2 野球試合 2 これぞボス!
3 ガンバレ!ボス 3 ハッタリくん
4 ゴーカート部誕生 4 かかしプレー
5 カートでカトー 5 ごりっぱ
6 空手道 1 大魔球
7 オートバイでつっ走れ 2 オトキチ騒動
1 新入生よきたれ! 3 犯人はだれだ
2 NO.1をかけろ! 4 イヤなイヤなイヤなやつ
3 マイクロにいちゃん 10 1 魔球ヒック
4 けがの巧名 2 強道館柔道
5 暴力学園 3 帰れ!キャプテン
6 あぶく作戦 4 再催眠術
1 おったバットが5万本 11 1 続・再催眠術
2 愛犬ボス登場 2 雪の村の対決
3 水中野球 3 アルバイト王
4 ロボット島 4 キャンプ村の怪盗
5 四つのいくさの物語 5 必死ハイク
6 サッカー 12 1 ハワイ珍道中
7 ミステリーゾーン 2 水にあるけば
8 となりの青い目 3 押しの一手
1 001/2アルバイトソロ 13 1 きょうのヒーロー
2 スーパーキャプテン 2 オリンピック騒動
3 静かなる男? 愛犬ボロー
4 バイト野郎 続・イナズマ野郎

              ※ 「少年」掲載順ではありません。
              ※ 「少年」休刊号(昭和43年3月号)最終回は、4巻の6「サッカー」です。
              ※ 4巻の1「おったバットが5万本」=クレイジー・キャッツ「五万節」の歌詞「飲んだビールが
                 5万本」のもじり。
              ※ 7巻の2「くたばれ!サチコの巻」=一番古い記憶にある作品。
              ※ 1話ごとに紹介できたらと特集を考えています。
                (続・漫画の部屋でも予告していましたがなかなか手が回らない。)

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